声優を目指す人の多くはデビュー前に声優専門学校や養成所に入りますが、気になるものの1つに費用のことがありますね。
声優養成所や専門学校に通うには、平均して100~150万円のお金が掛かります。
学費を払えないからと、声優の夢を諦めざるを得ない人もいるかもしれません。
そんな人のために声優養成所や専門学校では、奨学金制度を利用できるところもあります。
この記事では、奨学金で通える声優養成所や専門学校をご紹介します。
あわせて、奨学金の制度や種類、利用するための条件も詳しく説明しますね。
Contents
奨学金制度とは?
奨学金制度とは、経済的な理由で、大学や専門学校で学ぶことができない人のために費用を「給付」または「貸与」する制度です。
国や地方自治体、民間団体、学校独自でも奨学金制度を設けています。
各奨学金の申込基準や審査をクリアできれば、誰でも「進学に必要な金銭サポート」を受けることができますよ。
ただし、国や地方自治体の奨学金制度は「学校」に通いたい人が対象です。
よって声優を目指す場合、国や自治体の奨学金制度は「声優専門学校」に通う人だけが利用できます。
奨学金の仕組みは少し難しいので、次の章で詳しく説明しますね。
奨学金の種類は?
奨学金は大きく2つに分類できます。
1つ目は「貸与」という方法で、授業料を借りる奨学金制度です。
2つ目は「給付」という方法で、返す必要のない奨学金制度です。
また、「貸与型」の奨学金制度には、貸付利息が付くものと、利息の付かないものの2種類があります。
上記のことから、奨学金には以下の3つがあると考えてよいでしょう。
- 「給付型」…返済の必要がない奨学金
- 「貸与型の第一種」…返済の必要があり、利息のない奨学金
- 「貸与型の第二種」…返済の必要があり、利息がある奨学金
就職後の負担は「給付型➡貸与型第一種➡貸与型第二種」の順に大きく、
奨学金の審査は「貸与型第二種➡貸与型第一種➡給付型」の順に厳しいです。
当然ながら、負担が少ないほうが人気の為、審査基準は給付型が一番高いです。
ゆえに、日本国内の奨学金の利用者の約9割が「貸与型」の奨学金を利用しています。
奨学金は、1か所の奨学金しか利用できないわけではなく、併用可能な奨学金もあります。
奨学金を活かせば、在学中は経済的な不安をなくせるので、学校の勉強に集中できますよ。
では次に、「貸与型奨学金」と「給与型奨学金」の違いを説明しますね。
貸与型奨学金
貸与型は学費や生活費を「借りる」奨学金です。
在学している時は返済の必要はありませんが、卒業したら自分自身で借りたお金を返済していく必要があります。
貸与型奨学金には、利息なしで借りられるもの(第一種)と利息付きのもの(第二種)があります。
第二種は借りた金額よりも大きな額を返済する必要があるため、第一種を望む学生のほうが多いです。
しかし、第一種は選考基準が厳しいので、第二種の奨学金を利用している学生が多いです。
貸与型奨学金を利用するメリットとデメリットは以下の通りです。
【メリット】
- 在学中は返済の必要がない
- 募集している団体が多い
- 借りやすい
- 利子付き(第二種)でも利率が低い
【デメリット】
- 利用には連帯保証人と保証人が必要
- 返済の必要があるので、将来的に負担となる可能性がある
- 返済が滞ると個人信用情報機関に登録される
選考基準・貸与金額・利子について、第一種と第二種の違いを簡単にいうと以下の通りです。
【選考基準】
- 第一種…学業評定平均が3.5以上、かつ経済的理由で就学が困難
- 第二種…進学を志す受験生なら審査に通る、収入基準も低い
【貸与金額】
- 第一種…学校の種類や通学環境で、月々の上限支給金額が決まっている
- 第二種…学校の種類や通学環境に関係なく、2万~12万円の中で希望する月額を自由に選択可
【利子】
- 第一種…無利子
- 第二種…年3%が上限(在学中は利子なし)
貸与型奨学金は、基本的には入学後に奨学金の受け取りが始まります。
ただし、入学前に必要な入学金の支払いも難しい場合は、入学時に必要な一時金を借りることができる場合もあります。
日本学生支援機構の貸与型奨学金だと、貸与が終了した月の翌月から7ヶ月経過してから返済開始になります。
よって、仕事を始めてから約半年後が返済スタートとなるので、ある程度お給料が貯まってから返済することができますね。
貸与型奨学金には以下の4つがあります。
- 独立行政法人「日本学生支援機構JASSO」(国の機関)
- 地方自治体の奨学金
- 民間団体の奨学金
- 教育ローン
それぞれ説明しますね。
日本学生支援機構JASSO
日本学生支援機構は国の機関で、多くの学生が利用しています。
「貸与型」の他、「給付型」も設けています。
地方自治体の奨学金
地方自治体の奨学金制度には、以下の2種類があります。
- 各都道府県が設ける「地域条件のある」奨学金
- 各地方公共団体がそれぞれ独自に設ける「地域条件のない」奨学金
東京都を例に挙げると、都の支給する「東京都育英資金」の他…
各区が融資を行う奨学資金、各区の教育委員会が支給する奨学金など、様々な制度を利用することができますよ。
民間団体の奨学金
民間団体の奨学金は、各団体によって給付期間・給付金額など、条件がそれぞれ違います。
教育ローン
教育ローンには以下の3種類があります。
- 国の教育ローン(日本政策金融公庫)
- クレジット会社の教育ローン(オリエントコーポレーション、ジャックスなど)
- 金融機関の教育ローン(銀行や信用金庫など)
ただ、教育ローンは日本学生支援機構や民間団体の奨学金に比べ、借入の利息が高いです。
また、借りた翌月から返済が始まる場合がほとんどです。
ではここで、教育ローンの代表である日本政策金融公庫について、詳しくご紹介しますね。
- 借りられる限度額は350万円まで
- 借入翌日から年1.95%の固定金利の利息が発生
- 返済は最長15年まで可能
(母子・父子・交通遺児の場合は、最長18年まで可能)
上記は2023年3月時点の情報です。
詳しくは、日本政策金融公庫公式HPで確認してくださいね!
国の教育ローン(日本政策金融公庫)は利息が固定金利で返済期間も長いため、他の教育ローンに比べると返済がとてもしやすいのが特徴です。
続いて、給付型奨学金について説明しますね。
給付型奨学金
給付型奨学金はその名の通り、「給付」であるため、返済の必要はありません。
学生にはメリットの大きい給付型ですが、その分受給するための基準は厳しくなります。
ゆえに、給付型奨学金を利用できる学生は多くはありません。
給与型奨学金を利用するメリットとデメリットは以下の通りです。
【メリット】
- 返済の必要がない
- 給付型奨学金の対象となることで、入学金や授業料も免除もしくは減額される
- 保証人は不要
【デメリット】
- 受給のための基準が厳しい
- 貸与型と比べると採用人数が少ない
給付型奨学金を給付してくれる機関は色々とあります。
ここでは、声優を目指す専門学校で利用できる給付型奨学金の主な3つをご紹介しますね。
- 独立行政法人「日本学生支援機構JASSO」(国の機関)
- 新聞奨学生制度
- 一般財団法人ホリプロ文化芸能財団
声優専門学校によっては、使える奨学金がそれぞれ違います。
奨学金制度を利用する際は、よく調べてから申込をしてくださいね♪
ではそれぞれ説明します。
日本学生支援機構JASSO
貸与型奨学金のところでも出てきましたが、給与型奨学金の制度も設けています。
国の機関で、多くの学生が利用しています。
新聞奨学生制度
大手新聞社の系列の新聞配達店に住み込みで働くことで、給与と奨学金の両方が支給される奨学金です。
奨学金は奨学会が立て替えてくれます。
入学前に必要な学費を無利息で借りることができる上、家賃や食事なども最小限に抑えることができるので、自分の力で進学することが可能です。
ただし、新聞配達は早朝3時頃から始まり、夕方にも配達があります。
学業との両立は大変な苦労を伴います。
学校を辞めることになってしまっては何の意味もありません。
約束した期間は絶対にやり通すという覚悟で臨む必要があります。
ホリプロ文化芸能財団
ホリプロの創業者がエンターテインメント業界の活性化を目的に支援を始めた制度です。
将来、エンターテインメント業界(映画・音楽テレビ・舞台・声優など)で働くことを目指す学生を支援する給付型奨学金となっています。
毎月3万円(給付は6ヶ月分まとめて年2回)が給付されます。(2023年3月時点の情報)
多くの給付型奨学金では、他の貸与型奨学金と併用することができます。
いずれの給付型奨学金も人気が高く、申込期限もあるので、早めに詳細を確認して、申込を行ってくださいね。
奨学生制度を利用する場合の注意点は?
奨学金は、はっきり言うと「借金」です。
「給与型奨学金」は退学すればそれまで給付されていた金額を返済する必要があります。
「貸与型奨学金」は就職後毎月数万円という金額を奨学金の返済に充てる期間が続きます。
奨学金制度を利用する上でよくある失敗には、以下のようなものがあります。
- 本来の使用目的である学費以外に使用してしまい肝心の学費が払えなくなる
- 将来、月々の返済額が多すぎて返済できなくなる、など。
もし経済的な事情などで奨学金の返済が滞った場合は…
催促の連絡が来ることはもちろん、個人信用情報機関に登録されたり、最悪の場合訴訟を起こされ、財産を差し押さえられることもあります。
奨学金制度は、かなりの覚悟をもって利用する必要があります。
将来の自分を守るためにも、そのことだけは忘れないでくださいね。
声優養成所で奨学金が利用できない理由は?
将来のことを考えると少しでも負担の少ない制度を利用したいところですが…
声優養成所は無認可校なので、国や地方自治体の奨学金制度を利用することができません。
なぜなら、奨学金は経済的理由等で「学校」で学ぶことができない人のためにある制度だからです。
奨学金には沢山の種類がありますが、
- 公的機関から設置認可を受けている認可校(声優専門学校)
- 公的機関から設置認可を受けていない無認可校(声優養成所)
によって、利用できる奨学金が違います。
そうは言っても「国や自治体の養成所で奨学金が利用できないのはひどい!」と思う人もいますよね…。
でも、認可を取らないほうが授業内容や時間、設備などの法的な規制がなくなります。
故に、養成所のほうが最先端のカリキュラムや設備を提供できるという利点があるのです。
声優養成所は、専門学校よりも声優になるためのより実践的なレッスンを行います。
また声優プロダクションが養成所を設けていることもあり、養成所の中で頭角をあらわせば、早くデビューできる可能性もあります。
逆に専門学校であれば、基本的には2年間の学校生活の中で、基礎から実践までみっちり声優の技術を学ぶことができます。
自分にとって、養成所と専門学校のどちらで学ぶほうがメリットが高いかを考えてから、学費を工面する方法を検討してみるのもひとつの方法ですよ。
奨学金制度のある声優養成所は?
奨学金制度のある声優養成所を3つご紹介します。
- 総合学園ヒューマンアカデミー
- 青二塾
- 81アクターズスタジオ
利用できる制度や特待生制度をそれぞれご紹介します。
①総合学園ヒューマンアカデミー
ヒューマンアカデミーの特徴は、以下の4点です。
- デビュー実績の高さ
- 現役の講師のレッスンを受けることができる
- 最先端のカリキュラムを取り入れているため、変化しやすい声優業界に即対応できる
- 全国に21校を展開
費用はコースによって違いますが、年間約140万円掛かります。
他の養成所や専門学校に比べると比較的高めです。
夜間や週末のレッスンもあるので、働きながらでも通いやすいです。
様々な制度を利用して、費用を抑えることができます。
ヒューマンアカデミーで利用できるのは、以下のものがあります。
- 国の教育ローン(日本政策金融公庫)
- 労働金庫のローン(中央労働金庫)
- 銀行の教育ローン
- 信販会社の教育ローン(オリエントコーポレーション・ジャックス・アプラス・ヤマトクレジットファイナンス)
- 新聞奨学生制度
- 通学社員制度
詳しくは、ヒューマンアカデミー公式HPの教育ローンページで確認してくださいね。
ヒューマンアカデミーでは、特待生制度もありますよ。
入所オーディションの特待生で合格すれば、ランクに応じて初年度授業料が減免となります。
- SS合格 初年度授業料 50万減免
- S合格 初年度授業料 30万減免
- A合格 初年度授業料 10万減免
- B合格 初年度授業料 5万減免
特待生制度の詳細は、ヒューマンアカデミー公式HPの特待生制度ページで確認してくださいね。
②青二塾
青二塾の特徴は、以下の3つです。
- 老舗の声優養成所で、青二プロダクション付属の養成所
- 入塾試験が難しく、レッスンも厳しい
- 多くのプロを輩出していて、卒業生には中井和哉さんや金田朋子さんがいる
(ちなみに、お2人は会社員をしながら通われていました)
費用はコースによって違いますが、年間約110万円掛かります。
青二塾で利用できるのは、国の教育ローンの「日本政策金融公庫」のみです。
青二塾では特待生制度もあります。
オーディションで合格すると、ランクに応じて以下の特典があります。
- 青二プロダクションに直接所属となり、すぐにマネジメントを受けるプロになれる
- 青二塾 授業料全額免除
- 青二塾 授業料半額免除
オーディションの応募資格は、以下の2つです。
- 未成年者は親の同意が必要
- プロダクションに所属していない
詳しくは、青二塾公式HP、青二プロダクション公式HPで確認してくださいね。
③81アクターズスタジオ
81アクターズスタジオの特徴は、以下の2つです。
- 老舗の声優養成所で、アニメ業界に強い81プロデュース付属の養成所
- 在籍期間は1年間で卒業後は81プロデュースに所属できる
費用はコースによって違いますが、年間約86万円掛かります。
81アクターズスタジオには特待生制度もあります。
81オーディションのグランプリ受賞者は、81アクターズスタジオの年間約86万円のレッスン料が無料になります。
【応募条件】
- 中学卒業~満27歳までの男女
- 未成年者は親の同意が必要
- プロダクションに所属していない
詳しくは、81アクターズスタジオ公式HPで確認してくださいね。
奨学金制度のある声優専門学校は?
奨学金制度のある声優専門学校を3つご紹介します。
- 東京アニメーター学院専門学校
- デジタルアーツ東京
- アミューズメントメディア総合学院
それぞれの学校の特徴や利用できる奨学金、特待生制度について説明します。
①東京アニメーター学院専門学校
東京アニメータ―学院専門学校の特徴は、以下の3つです。
- アニメ全般の専門性の高いレッスンを受講できる
- 定期的に学内オーディションが開催されるため、デビューチャンスが多い
- 生徒の個性を引き出してくれる授業内容
声優タレントコースは、年間約110万円掛かります。
他の専門学校に比べると学費は安めです。
東京アニメーター学院専門学校で利用できる奨学金は、以下のものがあります。
- 日本学生支援機構(貸与型第一種・貸与型第二種の奨学金)
- 国の教育ローン(日本政策金融公庫)
- 信販会社の教育ローン(オリエントコーポレーション)
東京アニメーター学院専門学校では、特待生制度もあります。
特待生試験の結果に応じて入学金・授業料の一部が免除されます。
- Aランク 156万円(入学金と授業料2年間)
- Bランク 88万円(入学金と授業料1年間)
【応募条件】
過去に声事協・音製連・マネ協に加盟・承認されている声優事務所に所属歴がある30歳未満の方等
詳しくは、東京アニメーター学院専門学校公式HPで確認してくださいね。
②デジタルアーツ東京
デジタルアーツ東京の特徴は、以下の3つです。
- 少人数制
- 最新設備が整っているので、実践的なレッスンが受けられる
- アニメやアニソン歌手に強い
声優学科は、年間約83万円掛かります。
他の専門学校に比べると学費は安めです。
デジタルアーツ東京で利用できる奨学金は、以下のものがあります。
学校独自の奨学金制度がとても充実しています。
- 日本学生支援機構(給付型・貸与型第一種・貸与型第二種)
- 国の教育ローン(日本政策金融公庫)
- 信販会社の教育ローン(オリエントコーポレーション)
- デジタルアーツ東京独自の奨学金制度(返済義務なし)
全体で30名程度・2年間で48万円給付
学校独自の奨学金制度についてはデジタルアーツ東京公式HPで確認してくださいね。
また、デジタルアーツ東京では、特待生制度もあります。
デジタルアーツ東京の特待生制度
対象:推薦入学かつ高校3年間での欠席が5日以内で、評定平均値が3.5以上の生徒
書類選考の結果に応じて、初年度授業料の一部が免除になります。
- Sランク 初年度授業料から20万円免除
- Aランク 初年度授業料から15万円免除
- Bランク 初年度授業料から10万円免除
- Cランク 初年度授業料から5万円免除
詳しくはデジタルアーツ東京公式HPで確認してくださいね。
③アミューズメントメディア総合学院
アミューズメントメディア総合学院の特徴は、以下の2つです。
- 全日制で基礎からしっかり学べる声優学科の他、夜間や日曜日に通えるコース、オンラインで受講できるコースがある
- 就職率が高く、必ずどこかの声優事務所に所属できる
費用は年間約127万円と専門学校の中では平均くらいです。
アミューズメントメディア総合学院で利用できる奨学金は、以下のものがあります。
- 国の教育ローン(日本政策金融公庫)
- 信販会社の教育ローン(オリエントコーポレーション・セディナ)
- 新聞奨学生制度
- 寮つきアルバイト制度
- アミューズメントメディア総合学院独自の奨学金制度
(AO入試制度・推薦入学制度)
詳しくはアミューズメントメディア総合学院公式HPで確認してくださいね。
まとめ
以上、奨学金で通える声優養成所や専門学校についてお伝えしました。
- 国や自治体の奨学金は、声優専門学校でのみ利用できる
- 声優養成所でも養成所独自に設けている制度を利用できる
- その他教育ローンなど、費用を工面する方法は色々とある
- 奨学金制度は、将来の負担も覚悟の上で利用する
経済的な理由で夢を諦めようと思っている方でも、奨学金制度を利用すれば、声優養成所や専門学校に通える可能性はあります。
まずはダメ元で、返済の必要のない給付型奨学金に申し込んでみてはいかがでしょうか。
将来の負担が大きくなるので、一概には言えませんが、国や民間の力を借りてあなたの夢が叶うといいですね。
あなたの声がいつか誰かの気持ちを明るく前向きにできるかもしれません。
頑張ってくださいね。